生きる力をはぐくむ「総合的な学習」の在り方
-福井県の 「総合的な学習」 の現状とその課題- -要約-

総合的な学習研究プロジェクト
塩田 俊幸, 間 朋子, 中谷 忠裕

2002年度からの新教育課程に 「総合的な学習の時間」 が創設される。 「総合的な学習」 への対応について各学校では模索中であり支援を行う必要があると考えた。 そこで, 県内の小・中学校にアンケート調査をし 「総合的な学習」 の取り組み状況を把握した。 小・中学校とも地域の特色を生かそうと力を入れているが, 取り組みへの意識の差があるなど校種間の課題の違いも見られた。 その後, 課題への対処について再びアンケート調査を行い, 課題解決の糸口を探った。 各学校から集めた事例及び各種文献をもとに 『総合的な学習Q&A』 を作成し, 「総合的な学習研修講座」 で受講者に配布し支援の資料として役立ててもらった。

〈キーワード〉総合的な学習, アンケート調査

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情報活用能力を高めるネットワークの教育利用に関する研究
-インターネットを活用した授業を展開するための支援活動をとおして- -要約-

情報教育研究プロジェクト
針谷 俊明, 藤野 正昭, 富田 裕之, 丹尾 秀雄
安竹 良則, 内田 孝三, 林 智志恵, 山田 雅彦

社会のネットワーク化が進み, 学校においてもインターネットの教育利用が不可欠になってきている。 このことで, 子供たちの学びのスタイルは大きく変わろうとしている。 これからの学校で学ぶ子供たちは, 学習活動の中で与えられた情報を受動的に吸収するだけでなく, 必要とする情報について自ら調べ, たくさんの情報の中から必要なものを選択したり再構成したりする能力や, 情報の役割や影響を理解し情報社会がいかにあるべきかを考え, 必要な行動をとろうとする態度が求められるようになる。 わたしたちは, これらの情報活用能力を育成するために, ネットワーク環境を教育活動の中でどのように活用していくか, 学校現場への支援活動をどのようにしていくかという視点で研究に取り組むことで, これからの情報教育の在り方について考えた。

〈キーワード〉情報教育, 情報活用能力, インターネット, ガイドライン

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自分を見つめて大切にする子を目指した生と性の学習
-体験的活動や児童向け図書の活用をとおして- -要約-

戸田 典子

小学校における性に関する学習は, 性器についての学習だけでなく, 自分を見つめて大切にしていくための生き方の学習であると考える。 自他の生命や存在を大切にするための学習を 「いのちの勉強」 と称して, 体験的活動や児童向けの図書を活用した実践をした。 それらは, 児童が自分の心を見つめるために役立ったと思われる。 また, これまでの学習でなかなか取り上げられなかった性交については, 生命を産み出す 「生殖としての性交」 だけでなく 「ふれあいとしての性交」 を学習に取り入れた。

〈キーワード〉性教育, いのち, 体験的活動, ふれあい, 性交

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市町村適応指導教室との連携による不登校の子どもたちへの支援の研究
-適応指導教室合同体験活動のプログラムの検証- -要約-

川道 初美

当教育研究所では, 県内の市町村の適応指導教室と連携し, 合同で集団体験活動を行うことを通して, 適応指導教室の子どもたちを支援する研究を進めてきた。 本研究では, 集団体験活動中の子どもたちの行動, 状態を観察することを通して, 体験活動のプログラムの検証を試みた。
そこで, 明らかになったことは以下のようなことである。 活動の中, 子どもたちは次第に積極的に取り組む姿を見せ始めた。 自己表現や協力する姿も現れてきた。 集団体験活動後には, 学習意欲や登校意欲を示した子どもや, 実際に教室へ戻ることができた子どもがいた。 このことから, 合同の集団体験活動のプログラムは, 不登校の子どもたちの自信回復や意欲向上を図る上で効果的であると考えられる。

〈キーワード〉不登校, 集団体験活動, 適応指導教室, 連携

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生きる力をはぐくむための教育相談の在り方
-総合的な学習の視点からの不登校児へのかかわりを通して- -要約-

大澤 朋子

不登校の子どもたちの中には, 自分の周りの人たちに心を閉ざし, 他の人たちとのかかわりや, コミュニケーションがとりにくくなった子が多くいる。 彼らは, おおむね何事にも意欲を見せず, 興味関心を示せない。 この事例のA子は現在中学校2年生で, 家族以外の人たちとのかかわりはほとんどなく, 長く家に閉じこもっていた。 そこで, A子の活動意欲を引き出すために, 総合的な学習の視点から3段階の援助を行ったところ, A子は徐々に自信を持ち, 人間関係を広げていこうという意欲を見せた。 その結果, 小集団で活動している適応指導教室 「フレンド学級」 に入級することができた。

〈キーワード〉リレーション, 興味関心, 体験, 自信, 振り返り, 意欲

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マイライフから見た児童生徒の意識の変遷 -要約-

皆川 孝志・前田 洋一

「子どもが変わった」 という声がよく聞かれるようになった。 そこで, 当教育研究所で毎年行っているマイライフ(学級・学校・家庭適応度調査)第一部の調査結果を用い, 小学校4年生から高等学校3年生までの子どもたちの意識 (学習意欲度, 学級・学校適応感, 家庭適応感, 親の養育態度, 自己抑制感, 自己肯定感, 社会適応感, 登校意欲度) の変化を調べた。 その結果, 同一学年においてこの7年間では意識の大きな低下は見られなかった。 また, ある学年集団を抽出し, その集団の小学校5年生から高等学校2年生までの診断結果を追って, 発達的な変化を見たところ, 中学1年生から中学2年生において大きな意識の変化が見られた。

〈キーワード〉意識の変化, 発達的変化, マイライフ, 中学2年生

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マイフレンド学級が心の居場所になるための援助の在り方
-入級後も自己開示できない子どもの支援と,学校との連携を通して- -要約-

岡崎 一郎

今年度のフレンド学級は, 子どもたちの 「生きる力」 をはぐくむことを基本方針に据え活動してきた。 生きる力をはぐくむためには円滑な人間関係が培われていなければならないと考えられる。 フレンド学級に通う子どもたちの中には, 学校で人間関係をうまくつくることができず, 自分の居場所がなくなってしまった子どもがいる。 本研究で取り上げるA男は, 社会性の未発達により, 人間関係がうまくつくれない子であると考えられる。 そこで, フレンド学級の集団の中で社会性を身につけていくことで, 人間関係を構築できるのではと考え, 援助していった。 その結果, スタッフと話ができ, また会話ができる友達もでき, フレンド学級がA男にとって心の居場所になった。

〈キーワード〉生きる力, 人間関係, 社会性, 心の居場所

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書写の作品の見方について-実例編- - 要約 -

森中 明自

研究紀要第103号で示した 「書写の作品の見方について」 の考え方を児童生徒の作品に即して具体的に展開することにより, 書写指導においての疑問や悩みの解消及び書写指導にかかわる議論を生むことを願って実例編を作成した。 個々の作品について, 見方や支援等の例を示すとともに, 書写指導の改善につながると考えられる幾つかの提案をした。

〈キーワード〉書写, 硬筆, 毛筆, 作品の見方, 小学校, 中学校, 評価, 支援, 競書

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総合的な学習の単元づくりの在り方
-地域を生かした単元 4年 「ゆたかなみのりPR隊」 に取り組んで- -要約-

間 朋子

総合的な学習の具体的な単元を, 教師の思いを反映させながら, 同時に, 子どもの思いを生かしながら, どうつくっていけばよいのだろうか。 総合的な学習の単元づくりに役立つ知見を得ることを目的として, 地域を学習材とする 「ゆたかなみのりPR隊」 の単元づくりについて, ポイントとなる活動場面における教師の思いと子どもへの支援に着目して考察を行った。 その結果, 単元づくりのプロセスの一例を示すことができた。 また, 教師と子ども両者の思いをすり合わせていく手段は支援であるということ, 特に課題づくりと追究を深める過程においては, 支援が効果的に行われることが子どもの学びを高めていく上で大切であるということが考えられた。

〈キーワード〉総合的な学習, 単元開発, 支援の在り方, 地域学習

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国際化に対応した総合的な学習の活動及び授業の在り方 -要約-

塩田 俊幸

急激に進展する国際化社会にあっては, その変化に対応できる資質や能力を育成することが求められており, 新教育課程で創設される 「総合的な学習の時間」 の学習活動として国際理解教育も例示されている。 そこで, 国際理解を基にした総合的学習の活動や授業の在り方を各種文献や授業実践を通して探ろうとした。 人間性を土台とした国際理解のとらえ方をし, 人と人とのコミュニケーション力や表現力をつけることで, 自信をもって国際化社会を生き抜くことができると考える。 そういうことを目指した一つの方向性や具体的な活動や授業の一つの事例を示した。

〈キーワード〉総合的な学習, 国際理解, 国際化社会

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家庭科における問題解決能力を高める実践的・体験的学習の在り方
-環境に配慮した食生活の学習の指導法- -要約-

長谷川 美津代

新学習指導要領における家庭科の改善点では, 「実践的・体験的な学習活動を一層重視するとともに, 環境に配慮して主体的に生活を営む能力を育成するため, 自ら課題を見いだし解決を図る問題解決的な学習の充実を図る」 としている。 学習の成果が生活の場で生きて働く力となるために, どのような学習条件が整えば問題解決能力が高まるのか考察した。 その結果, 生徒の生活に身近な問題を題材とし, その解決に向けて, 実験・実習・ディスカッション学習という実践的・体験的学習を柱とし, さらに, プロジェクト学習を指導計画の中に位置付けることで, 自分自身の問題として発展的にとらえることが出来るのではないかと考えた。

〈キーワード〉家庭科, 食生活, 環境, 問題解決能力, ディスカッション学習

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小学校理科教育における観察実験の指導に関する調査研究 -要約-

前田 洋一・奥村 貢

本研究では, 福井県の小学校理科教育における観察実験の指導に関する現状を明らかにするためにアンケートによる調査を行った。 その結果, 以下の点が明らかとなった。 (1) 50%以上の教員が指導しにくいと考えている内容は, 「地層の観察」, 「星や星座の観察」, 「河川の観察」, 「岩石の分類」, 「生物の解剖」, 「太陽や月の観察」, 「動植物の飼育栽培」, 「植物の分類」, 「動植物の観察」 であった。 そのうち, 「河川の観察」 と 「動植物の観察」 は福井の教員が特に指導しにくいと感じていた。
(2) 全国と福井の教員を比較すると 「観察や実験のための機器や備品が不十分である」, 「予備実験や教材づくりの時間がない」, 「自分の授業では子供の実験より教師実験の方が多い」 の項目に有意差が認められた。

〈キーワード〉研修講座, 福井県の小学校理科教育, 自然観察, 野外観察

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廃水処理技術で用いられる「活性汚泥」の教材化
-浄化センターモデルの製作と微生物の観察を通して- -要約-

西出 和彦

「活性汚泥」 を利用した水処理は, 活性汚泥法として, 多くの浄化処理センターで行われている。 この 「活性汚泥」 を環境教育と生物教育の両方の視点からとらえて教材化を行った。 まず, 浄化センターモデルを作成し, これを用いて実験的に汚水を 「活性汚泥」 により浄化し, 浄化作用を確認することを通して, 水環境を考える教材とする。 次に, 「活性汚泥」 に含まれる微生物を顕微鏡観察の材料として取り上げ, 「活性汚泥」 中の食物連鎖や生物相の変化から, 生態学的視点に立った教材としても取り上げる。

〈キーワード〉活性汚泥, 環境教育, 生物教育, 微生物, 顕微鏡観察, 浄化センターモデル

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ロボットコンテストの運営と教育効果
- Management of Robot-Contest and Education Efficiency - -要約-

山本 利一

本研究は, 福井県で行われた県単位での中学生のロボットコンテストの取り組みと, その教育効果について検討を試みた。 ロボットは, 技術・家庭科の授業で生徒一人が一台のロボットをコンテストのルールに基づき製作し, 二人一チームを編成して競技を行うものである。 競技内容やロボット製作に関しては, 教員が研修の中で実際に製作・競技を体験し, そのことを踏まえてルールを中学生用にアレンジしたものである。 また, ロボットの製作が正規の授業時間内で収まるように, モータ数の制限や対戦方法に工夫を凝らし実践した結果, 生徒, 教員共々からロボットコンテストの参加に対して有意義であったという結果が得られた。 教員に対してのフィールドワークから, ロボットコンテストの課題点も明らかとなった。

〈キーワード〉ロボットコンテスト, 教育効果, 技術・家庭科, ものづくり

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児童生徒の科学的な興味関心を高める観察実験の工夫
-サイエンスカー巡回指導等において工夫・開発した教材・教具- -要約-

西川 和憲

当教育研究所では, 昭和44年度から, 県内のへき地複式校並びに小規模校 (児童生徒数小学校60名以下, 中学校30名以下) を対象に, 理科教育の振興と科学的知識・技術の普及を図ることをねらいとして, サイエンスカー巡回指導を行っている。 指導内容については, 科学教育課員が毎年演示実験等を工夫・開発している。 今回は, 過去2年間に上記のねらいの達成のため新たに工夫・開発された実験や教材・教具を紹介する。

〈キーワード〉興味関心, 科学マジック, 液体窒素, 手作りギター, 野草図鑑