高速通信ネットワークを活用した情報教育の在り方の研究
-デジタルコンテンツの開発・活用とテレビ会議システムを利用した授業を展開するための支援活動を通して-

酒井光洋,藤川純一,西脇繁和,辻川広也,多田敏明,伊東輝晃,酒井祥代,千葉晴信

高度情報通信ネットワーク社会に対応した新しい教育を推進していくため,高速通信ネットワークを活用した授業のツールとして,デジタルコンテンツとテレビ会議システムの教育的利用について研究を進めた。福井県の地域素材を中心とした動画等のデジタルコンテンツの開発やそれを利用した授業実践,活用状況についてのアンケートを通して,授業における有効性や活用状況についての課題が明らかになった。また,テレビ会議システムを利用した授業を展開するための支援活動を通して,授業における幾つかの有効な活用方法を見いだすことができた。

<キーワード> 高速通信ネットワーク,デジタルコンテンツ,動画,テレビ会議システム

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不登校児童生徒に対する効果的支援体制に関する研究

木谷 克己

不登校の要因・背景が多様化・複雑化するなかで,不登校への取組の一つとして学校と関係機関との連携が提言されている。本研究は,不登校児童生徒や保護者を支援するネットワークの中核として適応指導教室を位置づけ,支援の現状と連携に対するニーズを明らかにするため,県内の適応指導教室を対象に2回にわたる調査を行った。その結果,在籍児童生徒数,指導者,指導日数・時間,学校との連携,他の適応指導教室との連携,特殊教育センターとの連携,青少年自然の家との連携等の実態が把握され,検討が加えられた。

<キーワード> 不登校,関係機関,連携,ネットワーク,適応指導教室

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適応指導教室の活動プログラムにおける児童生徒の活動意欲の研究

山岸 忠祐

自己の生き方や在り方について考え,心豊かに生きる子供を育成するためには,進んで活動に参加できる意欲の醸成やコミュニケーション能力の育成が重要である。そこで,本研究は,教育研究所の適応指導教室「フレンド学級」において,どのような活動プログラムが不登校児童生徒の活動意欲やコミュニケーションの高まりに効果的かの検証を試みた。
平成15・16年度のフレンド学級では,「マイスタディタイム」,「ふれあい広場」,「マイプランタイム」などの日常の活動と「社会体験学習」,「宿泊体験学習」などの特別の活動を設定した。本研究では,そのそれぞれの活動プログラムについて,自己評価や行動チェック表により,調査対象生徒たちの活動状況を継続的に観察した。その結果,生徒たちの活動意欲やコミュニケーションが高まるプログラムには,自分で選択できる,ルールをよく知っている,少人数に分かれるなどの特徴が見られること,生徒たちの活動状況と学校復帰とが関連する傾向があることなどが明らかになった。

<キーワード> 活動プログラム,活動意欲,行動チェック表,自己評価

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不登校児童を支える小学校へのコンサルテーションの在り方に関する研究
-関係機関との連携を阻む要因について-

吉田 和美

不登校問題は学校・家庭・地域など,社会全体が取り組むべき問題であり,最近では多様な不登校に対して,機動力のある効果的な連携をいかに形成していくかが大きな課題となっている。
本研究では,公立の小学校の教員を対象に不登校児童支援についての調査を行い,不登校支援に対する教員の意識や関係機関との連携の実態を明らかにした。その結果,関係機関との連携への意識や問題点が分かり,小学校における教育相談体制の在り方や効果的なコンサルテーションの在り方について, 「子供のアセスメントや各関係機関をつなぐコーディネーターの役割をする関係機関があるべき」などの新しい視点を得た。

<キーワード> 小学校,不登校児童支援,教員,関係機関,連携,コンサルテーション

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自尊感情を高める道徳の時間の在り方に関する研究
-体験的活動を生かした道徳授業プログラムを通して-

霊河 多鶴子

子供たちを取り巻く様々な環境の変化を背景として,近年の学校現場はいじめや不登校,学級崩壊,少年非行の低年齢化など様々な問題に直面している。その要因として,子供たちの自尊感情(自己肯定感)や自己抑制力(自己コントロール力)の低下が考えられ,これらを育成することが喫緊の課題となっている。特に自尊感情の育成は,「豊かな人間性」をはぐくむ基盤となる。そこで,本研究では,体験的活動を生かした道徳授業プログラムの実践を通して自尊感情を高めるための道徳の時間の在り方を探った。その結果,本プログラムが自尊感情のより低い生徒に対してその形成を促す有効な方法であることが分かった。

<キーワード> 問題行動,自尊感情,豊かな人間性,道徳の時間,体験的活動

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解決志向アプローチを生かした初回面接の方法と実際
-リソースを引き出す質問と課題設定に向けての戦略-

大廣 憲治

カウンセリングにおいて初回面接は,今後の方向性を大きく左右するため特に重要である。その初回面接を成功させるためには,ある程度のカウンセリングの理論や技法を身に付けておくことが必要である。相談者との面接に生かされるカウンセリングの方法は数多くあるが,相談者の長所や可能性に焦点を当て,相談者をエンパワーしていくものに解決志向アプローチがある。解決志向アプローチは,相談者が抱える「問題」の原因探しをしない。相談者の中に眠る解決の力を引き出すために,相談者のリソース(資源)を共に見つけ,それらを生かして解決を構築することを支援する技法である。

この解決志向アプローチを初回面接の方法としてモデル化し,実際の面接に活用した結果,質問の仕方を工夫することによって様々なリソースが引き出せること,またそれらのリソースを生かすことで相談者のニーズに応じた課題設定が可能であることが分かった。

<キーワード> 解決志向アプローチ,初回面接,8段階モデル,リソース,課題設定

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集団適応指導教室におけるスタッフの言葉がけに関する研究
-合同宿泊体験学習「ウィズ・フレンズ」における体験学習を通して-

吉村 睦

合同宿泊体験学習「ウィズ・フレンズ」において,子供たち同士の人間関係づくりを促進するためには,まずスタッフと子供との人間関係の構築が大きな役割を担っている。そのためのかかわりの中でも,最初のアプローチである言葉がけについて分析した。
: その結果,「賞賛・励まし」,「雑談」といったスタッフの自己開示を伴うような言葉がけが有効であることが分かった。

<キーワード> 合同宿泊体験学習,人間関係づくり,言葉がけ,自己開示

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実践的コミュニケーション能力育成の指導と評価(外国語科)
-「話すこと」の観点別評価規準を活用して-

山田 邦子

生徒が英語を主体的に学ぶには「自ら学び,自ら考える場」を与え,自分の考えを積極的に伝える基本的な能力である実践的コミュニケーション能力を育成しなければならない。また,生徒が主体的に学び続けるには,生徒個人の学習への自発的動機付けとなるような自己評価力を高めることが求められる。そのためには,授業の目標に適した観点別評価規準を設定し,コミュニケーション活動後に生徒が相互評価や自己評価を行い授業を振り返ることが有効であり,それにより自らが次の学習への主体的な意欲を持つことができるようになるということが分かった。

<キーワード> 実践的コミュニケーション能力,コミュニケーション活動,観点別評価規準,自己評価,相互評価

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創造性・主体性を育成するための教材教具の開発
-Excel VBAを使った「動く絵」を通して-

吉川 雄二

中学校技術・家庭科[技術分野]の「情報とコンピュータ」内容では,生徒が主体的な学習を進めるための教材教具の開発が一層求められている。
本研究では,Microsoft Excelに搭載されたVBAを利用したプログラムの学習教材として「動く絵」を開発し,その有用性を検証した。この教材はMicrosoft Excelがあれば扱え,他のソフトウェアを導入する必要がない。さらに,生徒の興味関心や能力などに応じて内容の深度や時間数などの扱い方を調整できる。また,「動く絵」の制作を通して,生徒はアルゴリズムについての理解を深めると同時に,創造性を生かした主体的な制作活動に取り組むことができる。

<キーワード> 情報とコンピュータ,プログラミング,VBA

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高等学校数学科における学習意欲を高めるための数学的な見方や考え方を重視した授業の在り方
-単元「二次方程式」と「三角比」の実践を通して-

川端 優

本研究は,学習指導要領に示す目標に照らしてその到達状況を見る評価(いわゆる絶対評価)の観点「数学的な見方や考え方」の指導の在り方について考察したものである。評価規準を活用して授業実践を行い,「数学的な見方や考え方」の学習状況について評価した。その結果,授業において主体的な活動を仕組むことにより学力が定着し,学習意欲が高まっていくことが分かった。

<キーワード> 数学的な見方や考え方,評価規準・基準

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「ものの見方,感じ方,考え方」を自らの言語活動に生かすことのできる生徒の育成に関する研究
-高等学校国語科での伝え合う活動を通して-

三武 正明

高等学校国語科の「読むこと」において,単元(教材)の学習で生徒が広げたり深めたりした「ものの見方,感じ方,考え方」を自らの言語活動に生かすためには,自己評価活動を含んだ伝え合う活動(以下,「伝え合う活動」)を取り入れることが有効であることを明らかにしていく。それとともに,「伝え合う活動」でのワークシートを分析することで,「伝え合う活動」での活動内容と「ものの見方,感じ方,考え方」を自らの言語活動に生かすこととの関連を調べる。
その結果,「伝え合う活動」は,広げたり深めたりした「ものの見方,感じ方,考え方」(以下,「広げ深めた考え方」)を自らの言語活動に生かすことに有効であることが分かった。また,活動内容を分析した結果,「伝え合う活動」を通して自分の考えを変えた生徒は「ものの見方,感じ方,考え方」を自らの言語活動に生かしやすいことが分かった。

<キーワード> 「ものの見方,感じ方,考え方」,言語活動,伝え合う活動,伝え合い

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より豊かな食生活を創造するための家庭科学習活動の在り方
-調べ学習や個人実習を通して-

梅本 恵子

家庭科では,家庭生活をよりよくしようとする能力と態度を育てることを目標に,不易な課題の一つとして食教育を行っている。本研究では,より豊かな食生活を創造するために,調べ学習を基にしたポスターセッションや個人の調理実習の反復を取り入れた授業実践を行った。授業では,生徒が主体的に学習活動に取り組む姿勢が見られ,自分の調理の基礎的技術への自信につながり,家庭での調理へ広げようとする実践的な態度に発展させる一歩となった。このことにより調べ学習や個人実習が,より豊かな食生活を創造するために有効であると考えられる。

<キーワード> 食教育,調べ学習,ポスターセッション,個人の調理実習の反復

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生徒の興味関心に根ざした芸術科音楽指導法の研究
-ポピュラー音楽を教材とする授業を通して-

吉村 治広

本研究は,学習者の興味関心に根ざした音楽科教育の研究として,大多数の生徒の「生活の音楽」であるポピュラー音楽の教材性を,学習者の音楽し好という観点から実践的に検証したものである。ここでは,音楽の「よさ」と「好み」が別のものであることを認識させる学習として,あえてポピュラー音楽に関するし好調査において嫌われた曲を教材とする授業実践を行った。その結果,多くの生徒に音楽受容における「よさと好みの切断」がなされ,学力としての「音楽への関心・意欲・態度」の形成がみられた。本研究により,直接的に学習者の興味関心に向き合うポピュラー音楽活用の方法が一つ確認されたと言える。

<キーワード> 音楽し好,関心・意欲・態度,ポピュラー音楽,教材化

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確かな鑑賞能力の育成を目指す主体的な鑑賞学習の在り方
―選択教科「美術」におけるポートフォリオ評価法の活用を通して―

村上 清美

本研究は,中学校の選択教科「美術」において,ポートフォリオ評価法を活用した美術館における鑑賞学習を継続して行うことにより,確かな鑑賞能力(美術への関心・意欲・態度と鑑賞の能力)の育成を目指したものである。
鑑賞の能力の評価規準「美術作品の味わい方のポイント」を作成し,それを教師と生徒が共有して事前学習(調べ学習),鑑賞学習,事後学習(対話,自己評価,検討会)を繰り返し行った。その結果,生徒の鑑賞学習に対する意欲が高まり,一人一人の鑑賞内容に深まりが見られるようになった。したがって,ポートフォリオ評価法を活用した鑑賞学習が,確かな鑑賞能力の育成には有効であることが分かった。

<キーワード> 確かな鑑賞能力の育成,美術館における鑑賞学習,ポートフォリオ評価法,評価規準,対話

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「自ら学ぶ力」を育成する総合的な学習の時間の学習活動の在り方 -ポートフォリオの活用を通して-

高津 泰恵

本研究は,小学校の総合的な学習の時間において,ポートフォリオを活用した学習活動を行うことで,児童の「自ら学ぶ力」を育成することを目指したものである。「自ら学ぶ力」を育成するには,学習への意欲を高めたり自分の力の伸びを確認できたりすることが有効であると考えた。そこで,ポートフォリオを活用して,自分の学習への取り組み方を明確にしたり,評価規準に沿って自己評価を行ったりするような学習活動を継続的に行った。その結果,児童は学習への意欲を高めたり自分の力の伸びを感じたりすることができた。ポートフォリオを活用して学習への取り組み方を明確にしたり自己評価したりする学習活動は,「自ら学ぶ力」の育成に有効であった。

<キーワード> 総合的な学習の時間,自ら学ぶ力,ポートフォリオ,評価規準,自己評価